広島原爆の火を掲げて、世界平和を訴えようと、米国在住の尼僧安田行純さん(53)=東京都出身=らが、米西海岸のシアトルからニューヨークまでの約三千キロを横断することになり、20日、安田さんが被爆から56年後の今も福岡県屋野村で燃え続ける「平和の火」から採火した。
安田さんによると、米国内は中枢同時テロ後に、報復攻撃が始まってから緊張が続き、平和を訴えることがはばかられるような空気も漂っているが、「大勢の命を奪い、現在は平和の象徴として燃え続ける屋野村の火は、報復よりも祈りの大切さを教えてくれるはず」と話している。
「平和の火」は同村の山本達雄さん(85)が被爆直後の広島市から、亡くなった叔父の形見がわりに持ち帰り、1968年から同村が管理している。米国に渡るのは88年に国連本部(ニューヨーク)に運ばれて以来、13年ぶり。
北米横断は、米国先住民の平和運動家トム・ダストウさんが「平和の火を米国に紹介したい」と安田さんに相談したのがきっかけ。安田さんは同村との交渉だけではなく、同行することになった。
火はテロの影響で飛行機に持ち込めないため、メキシコ経由の船便で来年一月にシアトルに上陸。先住民の居住地だったネバダ州の核実験場やテネシー州のウラン濃縮施設などを訪ね、現地の平和団体と交流しながら、5月半ばに国連本部に到着する予定。 |